1. 定格電圧が電源電圧の1/2以下のモーターを選択する
前回説明した様にモーターの定電流制御では、電流設定値に到達するまで電源からモーターコイルに通電し、その後コイルに貯まったエネルギーを回生ループで消費しそれを一定周期ごとに繰り返して電流を一定に保ちます(チョッピング制御)。[図1]
また、モーターの定格電圧,コイル抵抗,定格電流の関係は大体[定格電圧÷コイル抵抗≒定格電流]になります。もし印加する電圧がモーター定格電圧より低いと[印加電圧÷コイルの抵抗成分<定格電流]となってしまい、定電流ドライブICに定格電流値を設定しても定格電流まで電流が流れず、チョッピング制御が行えません。
更に、モーターが回転するとモーターコイルが発電するため、モーターコイルに印加される電圧は、電源電圧からこの発電電圧を差し引いた電圧になります。この様に定電流制御時には発電電圧も考慮する必要があります。[図2]<注1>
このため、定電流ドライブICを使用する場合は少なくともモーターの定格電圧が電源電圧の1/2以下のモーターを選択します。
※注1.図では発電電圧を一定値で記載していますが、発電電圧は回転数により変化します。
2. モーターの定格電圧とコイル抵抗から定格電流を算出する
ステッピングモーターの仕様は定電圧駆動のデータで書かれ、定格電流値が記載されていない場合があります。その様な場合は、定格電圧とコイル抵抗から定格電流を求めます。
しかし、定電圧駆動に比べ印加する電圧が高い定電流駆動では電流の立ち上がりが早くコイルからの発電電圧の影響も小さくなるため、定電圧駆動よりトルク,高速特性が良くなります。
印加電圧にもよりますが、定格電流の8割程で定電圧駆動相当のトルクが出る場合があります。[図3]
この様に、定電流ドライブICで使用するステッピングモーターを選ぶ場合は、モーター印加電圧の1/2以下の定格電圧のモーターを選び、もし定電圧用モーターを使う場合は定格電圧とコイル抵抗から定格電流を算出し少し少なめの電流を設定すれば良いと考えます。
また、定格電圧あるいは定格電流のみが判っているモーターの場合、コイル抵抗値を実測すれば大体の定格電流,定格電圧が算出できますので、定電流ドライブICで使用できるか予想が付きます。ただし実測誤差やモーターサイズにより発熱が大きくなる場合もありますので注意が必要です。