ステッピングモーターは、電気信号を入力することで一定の角度だけ回転するモーターです。
回転数だけではなく角度を制御できるため、高精度な位置決めや制御に利用されます。
本稿では、ステッピングモーターの仕組み、特徴、使用例、制御方法などについて解説します。
ステッピングモーターの仕組み
ステッピングモーター(PM型2相ステッピングモーター)は、ローターとステーターと呼ばれる2つの要素で構成されます。
ローターは回転子とも呼ばれ回転する軸の部分で、S極とN極を交互に着磁された円柱形の永久磁石が取り付けられています。
ステーターは固定子とも呼ばれる円筒形の部品です。
ステーターは、N極とS極が交互に現れるようにポール(鉄芯)が配置された多極の電磁石で、コイルはA相とB相の2組が配置されています。
ステッピングモーターは、ローターが一定の角度だけ回転する「ステップ」を繰り返すことで、正確な位置決めや速度制御が可能になります。
具体的には、ステーターには、ローターを囲むように固定された複数のポールがあり、2組のコイルに電流を流すことで各相のポールが磁化されます。A相とB相が対応するポールは永久磁石の磁極間隔に対し半分ずらして配置されています。
外部の制御回路によって、各コイルに流す電流の方向と強さを制御すると、各ポールが一定のタイミングでS極とN極に励磁されます。この磁力が変化するタイミングによってローターの永久磁石には回転トルクが発生し、ローターは磁極間隔(ステップ)分だけ回転します。
1ステップの角度は、ローターがそれまで引き合っていたポールから次のポールまで移動するときの角度に相当します。つまりポールの数によって決まります。ポールを増やすことで、ステップ角をより細かくできます。
ステッピングモーターは、ステップ角が一定で精度が高いため、位置決めや制御が必要なアプリケーションで広く使用されています。
ステッピングモーターの特徴
ステッピングモーターの特徴は、以下の通りです。
- 高精度な位置決めが可能:
ステッピングモーターは、回転角度を制御できるため、高精度な位置決めが可能です。
- 高トルクを発揮:
ステッピングモーターは、低速回転時に安定したトルクが出せるため、ゆっくり動かす必要のある機械に利用されることが多いです。
- 回転速度が一定:
ステッピングモーターは、電気信号によって正確に回転するため、回転速度が一定に保つことが容易です。
- 静止状態でもトルクを維持:
ステッピングモーターは、静止状態で最も高いトルクを出すことができるため、その場で位置を保持する必要のある、クランプなどの要素が必要な機械にも利用されます。
ステッピングモーターの使用例
ステッピングモーターは、以下のような使用例があります。
- プリンター:
用紙の送りやヘッドの移動に利用されます。
- CNCマシン:
工作機械の位置決めに利用されます。
- 流体制御:
気体や液体の流量コントロールに利用されます。
- 自動車:
ステッピングモーターを利用したスピードメーターや、ヘッドライトの位置調整などに利用されます。
ステッピングモーターの制御方法
ステッピングモーターの制御方法には、以下のような方法があります。
- フルステップ制御:
2組のコイルに同時に同程度の電流を流して回転させる方法で、単純な制御が可能で高トルクですが、振動がやや大きいです
- ハーフステップ制御:
フルステップの動作フェーズの中間に1組のコイルだけに電流を流すフェーズを追加することで、フルステップ制御の半分のステップ角度で回転でき、フルステップより滑らかな回転が可能ですが、回転トルクが低くなる場合があります。
- マイクロステップ制御:
コイルに流す電流の強度を何段階にも分割することでハーフステップ制御よりさらに滑らかな回転が可能ですが、位置決め能力は分割数に必ずしも比例しない場合があります
ステッピングモーターを制御するために必要なもの
ステッピングモーターを制御するためには、以下のものが必要になります。
- 電源:
ステッピングモーターには、適切な電源が必要です。ステッピングモーターは通常のDCモーターと比べて入力電力が大きい場合があります。モーターサイズに見合った、適切な電源を用意する必要があります。
- ドライバー:
ステッピングモーターは、規則性を持った電流を流すことで回転を制御します。この電流変化を生成するためにドライバーが必要です。ドライバーは、外部からの信号を受け取り、ステッピングモーターに適切な電流を送出する役割を持ちます。
- マイコンまたはコントローラー:
ドライバーを通じてステッピングモーターを制御するために、コントローラーが必要です。マイコンやコントローラーを用いて、ドライバーに対して適切な制御信号を送ることができます。
- センサー(オプション):
ステッピングモーターを正確に制御するためには、位置や速度などの情報を取得するセンサーも有効です。これにより、ステッピングモーターの制御精度を向上させることができます。
まとめ
ステッピングモーターは、高精度な位置決めが容易で、低速度や停止保持に高トルクが発揮できるため、様々な機械に利用されています。
また、フルステップ制御、ハーフステップ制御、マイクロステップ制御などの方法で目的に応じた制御が可能です。
ステッピングモーターを選ぶ際には、回転角度、回転速度、トルク、制御方式などを考慮して適切なものを選ぶことが重要です。
当社はステッピングモーターだけでなく、モーションコントロール製品全般を取り扱っており、
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