[IoT事例] IoTサーボコントローラーTITANを使用したモーター制御

本特集は、機械設計(2021年9月号)に掲載された当社記事を再構成したものです。

1. はじめに

インダストリー4.0とは、製造業における、未来のスマートファクトリーの開発を目的とした、現在のトレンドのことである。
スマートファクトリーでは、人間の介入がほとんどあるいはまったくなしに、機械自体が監視、診断、意思決定を行うことができる。この目的を達成するための重要なステップとして、工場内のさまざまな制御システムからデータを収集し、さまざまな分析ツール(すなわち、機械学習、AI)を使用して、知的診断と意思決定を行う。

その試みの中で、しばしば、収集されたデータの種類や品質に重点を置くのではなく、分析ツールに焦点をあてられることがある。
しかし、英語で"garbage in, garbage out,"「=ごみを入れれば、ごみしか出てこない」と言われるように、分析されるデータの種類と品質によって、真のスマートファクトリーを達成するうえでの意思決定とその成果の質が決まることになる。

Arcus Servo Motionの2ndSightは、製造現場のモーション制御システムから収集された生のモーションデータから、高品質で意味のあるデータを生成するエッジ解析アルゴリズムである。
2ndSightのデータは、それ自体でも製造工場を稼働させるモーション制御システムの真の健全度を明らかにするが、もしこのデータが今はやりの高レベルの解析ツール(つまり、機械学習、AI、クラスタリング、ビッグデータなど)に入力されると、工場全体の総体的な健全度を判断することができる。
したがって、2ndSight は、生産設備の稼働時間の改善、故障の予知、メンテナンスの予測、生産資源の使用計画と配分の改善、それ以外の多くのことで、スマートファクトリーの開発を可能にするものである。

2. 2ndSightとは

2ndSight はServo5.0 Initiative(サーボ5.0の先駆け)の一端である。次世代のモータコントローラは、モーション制御がうまく行えることはもちろん、知的に自己を監視し、モーション制御メカニズムの健全性と状態を自己診断することが可能である。

2ndSight は、モーションコントローラですでに利用可能な基本的な生のモーションデータ(位置、速度、電流など)を使用し、モーション制御システムの真の健全性と状態を表す意味のあるデータを生成する。結果として得られる2ndSightのデータは、多次元の摩擦、振動、イナーシャ、トルク値で構成され、モーションシステムの真の状態を示すとともに、現在問題が発生している、あるいは、将来的に故障の原因になりそうな潜在的な位置と速度を特定する。

2ndSightはクラウド上でも実行できるアルゴリズムだが、その効率性、コンパクトさ、非時間的な特徴により、モーションコントローラに組み込まれたエッジで実行するのが最適である。コンパクトで意味のある2ndSightデータは、ネットワーク全体およびクラウドとの共有が簡単に行え、通信や使用する設備への負荷が最小限に抑えられる。

Arcus Servo Motion では、チップ単位の製品から、すぐに使えるマルチ軸モータコントローラまで、TITANサーボモータコントローラをフルラインで提供しており、すべて2ndSightを内蔵し、動作できるようになっている。TITAN製品は、業界のほとんどのタイプのモータを制御する能力を持 っており、2ndSightを搭載したTITANは、将来の真のスマートファクトリーで使用する準備ができている。

3. 2ndSightの試験とその構成

当社は、ボールねじ駆動ステージ、ベルト駆動ステージ、リニアシャフトモータ駆動ステージの3種類のメカで、TITAN‒SVX‒ETHコントローラを使った2ndSight のテストを行った(図1)。

2ndSightは、それぞれのTITAN‒SVX‒ETHユニットで有効化され、制御が実行されるとともに、単純化されたリアルタイムの摩擦値を抽出した。 2ndSightのデータは、ワイヤレスESP32モジュールを使用して3台のTITANユニットから引き出され、社内サーバーにアップロードされた。そして、既製のデータ可視化ソフトウェアを使用して、各駆動ステージの2ndSightのデータ値表示が行えた。



(図1) 2ndSightのテストとその構成

 

4. 2ndSight試験結果

図2の2ndSight データは、1時間スパンでのそれぞれのステージのクーロン摩擦値を示している。 2ndSight は、ベルト駆動ステージが一貫して最大の摩擦値を示している。グリースなしのボールねじステージが次に大きく、グリースありのステージはそれ以下である。当然ながら、非接触線のシ ャフトモータは、一貫して一番小さい摩擦値を示している。

ベルト駆動ステージは、摩擦値のわずかな減少を示し、これは、より剛性が低くなっていることを示している。グリースなしのボールねじ駆動ステージの摩擦値は、時間の経過とともに増加していることがわかる。グリースありのボールねじ駆動ステージは平らな一貫した摩擦値を示している。リニアシャフトモータは、安定状態で摩擦値のわずかな増加と、時間経過とともにわずかな減少を示している。

(図2) 2ndSightデータ(クーロン摩擦値)


図3のグラフは、アンビエントデーター社のIoTデータ監視ソフトウェアを使用した場合の、各種ステージの2ndSightデータのモニタリングの状態を示している。2ndSight データのモニタリングには、 アンビエントデーター社のもの以外にも、さまざまなデータの可視化ソフトウェアを使用することが可能である。

(図3) 各種ステージの2ndSightデータのモニタリングの状態


 

5. 2ndSight紹介動画と実験動画

TITAN-SVX-ETH

Ethernet IoTサーボコントローラーTITAN

【特長】
・ほとんどのタイプのサーボモーターに対応: ステッピング、ブラシレスサーボ、リニア、シャフト、DC、ボイス コイル モーター各種
・一般的に頻繁に使用される通信方式に対応: イーサネット、USB、RS485
・多くの高度なモーション制御機能が付属: 自動パラメータ検出、自動チューニング、推力/トルク制御、およびマルチスレッド モーションプログラミング
・感覚的で使いやすいTITAN ソフトウェアを使用し、誰でもすぐにサーボモーションシステムを起動できます。
・2ndSight モーションエッジ分析アルゴリズムと新しい Arcus Servo 5.0 スタンダードにより、Industry 4.0/Industrial IoT の新興分野における新しい課題と要件に対応しています。

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