定電流ドライブICを使用する際の電流設定

1. ステッピングモーターの定電流制御方法

モータードライバー内の定電流制御回路は以下の様な動作をします。[図1][図2]
ステッピングモーターの巻線もコイルであり、定電流駆動はこの性質を利用しています。

(1)スイッチング素子(FET等)をONし、電源からコイルに電圧が印加されコイル電流が増加する。※1

(2)電流設定値に到達するとスイッチング素子をOFFし、電源からの電圧供給を止める。

(3)コイルに貯まったエネルギーは通れる経路に電流を転流し消費される。このときコイルに流れる電流はコイルに貯まったエネルギーが消費されるため減衰する。

(4)タイマーにより一定時間が経った後に(1)(2)(3)フェーズ を繰り返して、一定の電流が流れる。

(2)の電流設定値に到達したかの判断には、電流センサーが必要になりますが、多くのドライブICでは安価な抵抗が電流センサー(検出抵抗)として利用されます。
 オームの法則(V=I×R)より、抵抗に電流を流すと抵抗両端に電圧が発生します。よって、この電圧を測定することにより流れている電流の値が判ります。
 モーターコイルと直列に抵抗を入れると、コイルに流れた電流が抵抗にも流れますので、抵抗の両端の電圧を測ることにより、コイルに流れる電流の値が判ります。

※1.モーターのコイルにはインダクタンス成分があり、電流の変化を妨げる働きをします。
 モーターの電流制御を行う場合、このインダクタンスの特性(誘導起電力)を利用します。
 ・コイルに電流が流れていない時に電圧を印加すると、電流は時間をかけて増加します。
 ・コイルに電流が流れている時に電圧の印加をやめるとコイルに貯まったエネルギーにより、回路内の通れる経路に電流が
 流れます。電流が通れる経路が無い場合はコイル端に高い電圧が発生し回路が破損する場合があります。

2. 基準電圧の設定と検出抵抗の選択

多くの定電流ドライブICには、出力電流設定のためのREF端子(呼称はリファレンス,出力設定等)があります。この端子に印加する電圧と、モーター電流が検出抵抗に流れて発生する電圧を比較して定電流制御を行います。
なお、検出抵抗の値が大きいとワッテージの大きな抵抗が必要になるため、ドライブIC内に検出電圧を増幅する回路が内蔵され、値の小さな検出抵抗が使用できるようになっています。[図3]※2



例として、下記条件の基準電圧と検出抵抗を選定します。
・ドライブICのREF電圧入力範囲:0.8~2V
・ドライブICの検出電圧増幅倍率:5倍
・モーターコイルに流す電流値:0.5A

選定手順は、
 (1)REF電圧=0.5A×検出抵抗R×5倍となるので、REF電圧を2Vと仮定し、仮の検出抵抗R’を求める。これよりR’=0.8Ωとなる。
 (2)REF電圧が2Vを超えない様、0.8Ωより小さい抵抗値をE24系列などの入手可能な抵抗値より選定する。本例ではR=0.75Ωを選択。
 (3)抵抗のワッテージはI2×Rより、0.1875W以上のものを選定する。本例では0.5Wを選択。
 (4)R=0.75Ωより、REF電圧=1.875Vになる。
上記の結果、基準電圧=1.875V,検出抵抗=0.75Ω (0.5W) の選定となります。※3

基準電圧の作成には、安定した電圧を抵抗分圧し使用する方法や、マイコンのDA出力電圧を使用するなどの方法があります。
電流の値を調整したい場合は、抵抗分圧の抵抗を可変抵抗にすることにより行えます。
ただし、ドライブICのREF電圧入力範囲を超えない様に注意する必要があります。※4

※2.ドライブICによっては、マイクロステップや電流割合変更用のレベル変換回路が付いているものや、検出抵抗内蔵のもの、電源側に検出抵抗を取り付けるものなどもあります。
※3.基準電圧、検出抵抗共に定電流制御を設定するうえで重要なポイントになります。基板設計時には基準電圧の安定化や、 検出抵抗をドライブIC近くに低インピーダンスで配置、接続するなどの注意が必要です。
※4.検出抵抗、増幅回路、コイルのばらつきにより、コイルに流れる電流は誤差が発生します。

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