ステッピングモータードライブICの基礎

近年のステッピングモーター用ドライブICは、スイッチング素子(FET)の特性の改善によりON抵抗が下がり、発熱も下がることにより小型化してきています。また、様々な機能も追加され使いやすくなってきています。
ここではステッピングモータードライブICの基礎となる部分を説明します。

モータードライバー回路の区分

ステッピングモーターを動かすにはドライバー回路が必要です。
このドライバーには、モーター駆動の種類として[ユニポーラとバイポーラ]、モーターに流す電流の制御方式として[定電圧と定電流]があります。

これらの組み合わせとして、
【A】 ユニポーラ定電圧ドライバー
【B】 バイポーラ定電圧ドライバー
【C】 ユニポーラ定電流ドライバー
【D】 バイポーラ定電流ドライバー

などがあります。

【A】【B】の定電圧ドライバーは、モーターコイルの抵抗成分[R]とモータに掛ける電圧[V]から、オームの法則にしたがい、モーターに流れる電流[I]が決まります。※1
定電圧ドライバーは回路構成が簡単ですが、電流値が固定になるため、モーター特性(トルク,応答性,発熱)の変更はあまり簡単ではありません。※2

【C】【D】の定電流ドライバーは、モーター電流が変更しやすいため、モーター特性の変更が比較的容易です。※3 ※4
また、モーターに供給する電圧を高くすることにより、定電圧ドライバーに比べ高速での応答性が良くなります。
ステッピングモーターの特性を引き出すには【C】【D】の定電流ドライバーが適しており、半導体メーカーはこれらのドライバーをドライブIC化しています。

※1 抵抗成分以外にインダクタンス成分の影響もありますが、低速では抵抗成分が支配的です。
※2 特性を大きく変えるには、モーターや電圧を変更する必要があります。細かな特性変更には回生回路の定数を調整するなどの方法もあります。
※3 電流値の調整により特性を変えることが可能です。また、モーター発熱の考慮も必要です。
※4 定電流駆動は、大きな電流値を絞って必要な電流値にする様な制御を行います。このため、必要な電流値より多く電流が流せる様な、電圧またはコイル抵抗値を選定する必要があります。

【図説】ユニポーラ駆動とバイポーラ駆動

ユニポーラ バイポーラ
モーターコイルを半分ずつ使い、どちらに電流を流すかで、
コイルの極性(N/S)を切り替えます。
・スイッチ素子が少なくシーケンスが簡単。
・モーターコイルの使用効率が低い。
モーターコイルに流す電流の向きを切り替えて、
コイルの極性(N/S)を切り替えます。
・スイッチ素子が多くシーケンスが複雑。
・モーターコイルの使用効率が高い。

【図説】定電圧駆動と定電流駆動

定電圧駆動 定電流駆動
モーターコイルの抵抗成分[R]と、モータ印加電圧[V]により、
モータ電流[I]が決まる。
・回路構成が簡単。
・モーターは基本特性で動作。低速動作。
モーターに流れる電流[I]を検出し、
スイッチ素子をスイッチングして一定電流値に制御する。
・回路構成が複雑。
・モーターの特性改善が図れる。高速動作可。

組み合わせの特徴 【A】【B】【C】【D】

【A】ユニポーラ定電圧
ドライバー
【B】バイポーラ定電圧
ドライバー
【C】ユニポーラ定電流
ドライバー
【D】バイポーラ定電流
ドライバー
・励磁制御:簡単
・コイル使用率:1/2
・回路構成:簡単
・特性変更性:困難
・モーター特性:基本
・停止時発熱制御困難
・励磁制御:やや複雑
・コイル使用率:1
・回路構成:やや複雑
・特性変更性:困難
・モーター特性:基本
・停止時発熱制御困難
・励磁制御:簡単
・コイル使用率:1/2
・回路構成:複雑
・特性変更性:容易
・モーター特性:改善
・停止時発熱制御可
・励磁制御:やや複雑
・コイル使用率:1
・回路構成:複雑
・特性変更性:容易
・モーター特性:改善
・停止時発熱制御可
モーター特性をあまり求めないローコスト用途向け。

[動作特徴]
低速動作
回路構成が複雑なため国内ではあまり使用されていない。

[動作特徴]
低速・中トルク動作
IC化で回路構成・制御性が改善。モーター特性有効利用。

[動作特徴]
高速・中トルク動作
IC化で回路構成・制御性が改善。モーター特性有効利用。

[動作特徴]
中速・高トルク動作

※ 当社では、
ユニポーラ定電圧ドライバーとして【AD1111、AD1131】
ユニポーラ定電流ドライバーとして【AD1231】
バイポーラ定電流ドライバーとして【AD1431】
を販売しております。

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